たるこすの日記

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4. 解答を書く -東大卒が教える高校数学の考え方-

 この章では「解答の書き方」について解説します。

 「解答を書く」ということは試験にもおいては非常に大切なステップです。 いくら問題が解けていても、正しい解答が書けなければ点数をもらうことはできません。

 問題の解答には、自分の出した解が正しいことの証明を書くべきです。 詳しくは「1章 数学とは」をご覧ください。

4.1 証明(解答)の書き方

 証明において必要なことは、「それぞれの文章・数式が正しいことが明らかである」ということです。 「正しいことが明らかである」とはどういうことでしょうか?

 当たり前ですが、まずは「文章・数式が正しい」ということです。 最終的に得られた解が正しいためには、それまでの文章・数式は全て正しい必要があります。

 そしてもう一つ大切なことが、「正しいことが明らかである」ということです。 つまり、単に正しいというだけでは不十分なのです。

 正しいことが明らかであるというのはどういうことでしょうか? それは、解答を読んだときに文章・数式が正しいことが簡単に納得できるということです。 もし、解答を読んだ時に「本当に正しいのかな?」 と疑問を感じてしまう場合には、正しいことが明らかではありません。 正しくない、または、説明が足りていないということになります。

 具体例をあげて考えてみます。

問題

さいころを2回投げるとき,1回目は3以下,2回目は3以上の目が出る確率を求めよ。

良い解答

3以下が出る確率は
{ \displaystyle \frac{3}{6} = \frac{1}{2} }

3以上が出る確率は
{ \displaystyle \frac{4}{6} = \frac{2}{3} }

よって、求める確率は
{ \displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} = \frac{1}{3}\\ }

良くない解答

{ \displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} = \frac{1}{3}\\ }

良い解答、良くない解答

 良い解答、良くない解答、両方とも解は同じです。どちらも、間違った式を書いているわけではありません。

 ですが良くない解答の方では、 { \displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{2}{3} } という式が導かれることが明らかではありません。

 ただ、もしかしたら上記の式が導かれることは明らかだと思った方もいると思います。 正直言って、明らかか明らかでないかの判断は人によって異なっています。 テストの場合には、テストの基準や採点者によってその判断の基準は変わってしまいます。

 では、どうすれば良いかと言うと、なるべく詳しく解答を書くことで、正しいことを「より明らかに」するように心がけてください。 説明が足りなくて減点されることはあっても、詳しく書きすぎて減点されることは無いからです。

 ここで取り上げたのはとても簡単な例でしたが、どんなに問題が複雑でも同じです。 正しいことが明らかな文章・数式を並べていくことで正しい証明というものが出来るのです。

4.2 正しい証明を書くポイント

 この節では、正しい証明を書くためのポイントをより具体的に説明します。 ポイントは、計算はとばして論理をとばすなです。

計算はとばす

 まずは、「計算はとばす」についてです。 解答用紙を計算用紙がわりに使ってしまっている人が多いかと思います。しかし、そうすると解答用紙が計算で埋め尽くされて、ぐちゃぐちゃになってしまいがちです。

 答案には当たり前の計算は書く必要はありません。計算は別の紙で行なって、ある程度省略して書くことが望ましいです。

 ただし全部の計算を省略していいという訳ではありません。式変形において、当たり前ではない部分、というのは残す必要があります。

 下の例を見てください。

{ \displaystyle \begin{aligned} &\sum_{k=1}^n{\{(k+1)^2 + k\}} \\ =&\sum_{k=1}^n{\{k^2+2k+1 + k\}}\\ =&\sum_{k=1}^n{\{k^2+3k+1 \}}\\ =&\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) + \frac{3}{2}n(n+1) + n\\ =&\frac{1}{6}(2n^3+3n^2+n) + \frac{3}{2}(n^2+n) + n\\ =&\frac{1}{3}n^3+2n^2+\frac{8}{3}n \end{aligned} }

 この数式で解答に書くべきなのはどの行でしょうか? 1行目から3行目への変形は展開しただけなので、当たり前の変形です。そのため2行目は省略しても問題ありません。4行目から6行目も同様です。

 それに対し、3行目から4行目へは{ \Sigma} が展開されて式が大きく変わっています。そのため、この部分は省略せずに解答に書いておくべきです。

論理をとばすな

 続いて「論理をとばすな」の部分です。

 よくやってしまいがちなのが、いきなり数式を書き始めてしまうことです。 そうではなくて、数式の前に「どうしてその数式がなりたつのか」「どうしてそう言えるのか」という理由を書かないといけません。

 理由が書かれていないと、その数式が成り立つことが明らかではありません。そのため、正しい証明にはならないのです。 また、理由をきっちり書くことで数式が本当に成り立つのか自分でも確認することができ、間違い防止にもつながります。

 間違いが起こりやすいのは次のような箇所です。

  • 「(〜なので) Aである」という文章
  • 書き始めの数式(前に = がついていない数式)

 どちらの場合も、「自分の書いた文章や式が本当に合っているかな?」と自分自身でよく確かめることが重要です。
以下のように、自問自答してみてください。

  • 「〜なので」と書いたけれど〜の部分は正しいだろうか?
  • 「〜なのでAである」と書いたけれどAにはならない場合はないだろうか?
  • この数式が成り立つ理由を書いているだろうか?
  • 書いている理由は正しいだろうか?

 テストや入試でなければ、このようなことを考えるのは面倒だと思うかもしれません。 しかし普段からやっていないことが本番でいきなりできるはずはありませんし、常にこのように考えることで論理的な思考が身に付いていきます。

 一人で見直してもよくわからない、間違いに気づけない、という場合には他の人と解答を見せ合うと良いと思います。 その場合には、他の人の解答を「間違っているのでは?」と批判的に読むことが大事です。

 他の人の解答を読んでいくと、「どうしてこうなるんだろう?」と疑問に思う部分が出てくるはずです。 そういう部分は、説明が足りない、もしくは間違っている部分となるので、自分でも気をつける必要があるということがわかります。 また、逆に自分の解答を読んでもらうことで、そのような部分を教えてもらえるでしょう。

前: 3章 計画を立てる
次: 5章 間違いに気づく
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