たるこすの日記

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リアルからバーチャルへ、バーチャルからリアルへ

3. 計画を立てる -東大卒が教える高校数学の考え方-

高校数学

この章では、どのような解法で問題を解いていくか、という計画を立てるステップについて解説します。

3.1 パターンを適用する

 問題の解き方はどうやって見つければよいのでしょうか? 十分な時間があるならまだしも、限られた試験時間の中で全く新しい解法を自分で見つけることは不可能に近いです。 そのため、公式や、教科書・参考書で解説されている解法といった、解き方のパターンを適用して解き方を見つけます。

 パターンを適用するために重要なことは3つあります。

 1つ目は、多くのパターンを知っていることです。 どうやってパターンを身に付けるかについては6章で説明するので、ここでは説明を省略します。

 2つ目は、パターンを正しく使うことです。

 3つ目は、パターンを広範囲に適用することです。

パターンを正しく使う

 パターンを正しく使うために必要なことは、以下の2つです。

  • そのパターンがどういう条件で使えるのかを理解する
  • 何を用いて何を求めることができるのかを理解する

パターンがどういう条件で使えるのか

 パターンには必ず、それを使うことの出来る条件というものがあります。 例えば、三平方の定理が成り立つのは直角三角形の場合だけです。 また、以下の数式で表される、確率の加法は各事象が排反でなければ成りたちません。

{ \displaystyle P(A \cup B) = P(A) + P(B)   (事象A, Bは排反) }

 条件を考えずにやみくもにパターンを当てはめてしまうと、誤った結果を出してしまいます。 本当にそのパターンを使えるのかよく確認してください。

何を用いて何を求めることができるのか

 言い換えれば、「どういう情報を知っている場合に、どういう値を得ることができるのか」ということです。 これを理解しておけば、いま解いている問題にそのパターンが役に立つかを判断できます。

 先ほどと同じ例でいえば、三平方の定理は2辺の長さを知っている場合に、もう1辺の長さを得ることができます。 ですが、3辺の長さを既に知っている場合には役に立ちません。 また、確率の加法は、各事象に対する確率を知っている場合に、それらのどちらかが起こる確率を得ることができます。 ですが、その問題に {P(A\cup B)} が必要ない場合には役に立たないでしょう。

パターンを広範囲に適用する

 3つ目の重要なことは、パターンを広範囲に適用することです。 難しい問題ほど、どのパターンを使って解けばいいかということが分からないようになっています。 自分が知っているいろいろなパターンを、その問題に使えないか考えてみてください。


 例として、因数定理を考えてみます。 因数定理によれば、多項式 { f(x) } に対して {f(\alpha) = 0} を満たす { \alpha } が存在すれば、{f(x)}{ x-\alpha }を因数にもちます。

 この定理は3次方程式を解くために利用できます。 { \displaystyle x^3 + 4x^2 + 3x - 2 = 0 } を解く場合、 { \displaystyle f(x) = x^3 + 4x^2 + 3x - 2 } とおくと、以下のように {f(-2) = 0} が成りたちます。

{ \displaystyle \begin{aligned} f(-2) &= (-2)^3 + 4(-2)^2 + 3(-2) - 2\\ &= -8 + 16 -6 -2\\ &= 0\\ \end{aligned} }

したがって、{f(x)}{(x+2)}を因数に持つため、以下のように因数分解できることがわかります。

{ \displaystyle f(x) = (x+2)(x^2+2x-1) }

したがって、解は以下のように求まります。

{ \displaystyle x = -2, -1 \pm \sqrt{2} }


この因数定理は以下のような多項式因数分解にも利用できます。

{ \displaystyle ab^2 + bc^2 + ca^2 - a^2b - b^2c - c^2a }

これを、{a} についての多項式と見て、

{ \displaystyle f(a) = ab^2 + bc^2 + ca^2 - a^2b - b^2c - c^2a }

とおきます。 すると、{a}{b} を代入した値である、{f(b)} は以下のようになります。 少しややこしいですが、{f(a)} では {a} が変数、{b, c} は定数だと思うと理解できるはずです。

{ \displaystyle \begin{aligned} f(b) & = b^3 + bc^2 + cb^2 - b^3 - b^2c - c^2b\\ &=0 \end{aligned} }

したがって、{f(a)}{(a-b)} を因数に持つことがわかります。 よって、以下のような式変形で因数分解が可能です。

{ \displaystyle \begin{aligned} &ab^2 + bc^2 + ca^2 - a^2b - b^2c - c^2a\\ =& ca^2 - ba^2 + b^2a - c^2a + bc^2 - b^2c\\ =& (a-b)(ca-ba - c^2 + bc)\\ =& (a-b)(b-c)(c-a) \end{aligned} }


 このように、見た目は異なっていても、同じパターンを当てはめることができる場合はたくさんあります。 問題の本質をとらえ、パターンを当てはめることが重要なのです。

3.2 試してみる

 パターンを当てはめることが出来れば、解法が見えてきます。

 ですが、解法が思いついたからと言って、すぐに解答用紙に書き始めてはいけません。 なぜなら、その解法で上手くいくかどうかはまだ分からないからです。

 まずは、計算用紙を使って問題を解いていきます。 さらさらと解き進められて、解までの道筋がみえた場合は成功です。 ここで初めて解答用紙に解答を書き出します。 解答の書き方について、詳しくは4章で説明します。

 もし、途中で詰まってしまい、解まで辿りつけないようなら方向転換が必要かもしれません。 別のパターン、別の解法が使えないか考えてみましょう。

 解法を試してみる際には、それを使えば必ず解を導くことができる、という確信はなくてかまいません。 むしろ、分からないからこそ試してみる必要があるのです。 実際に計算を行なってみることで、その解法を使えるかどうかが分かってきます。

 解法を複数思いつく場合もあるでしょう。 例えば、図形問題であれば、幾何的に解く方法、座標をおいて方程式で方法、ベクトルで解く方法、といったような複数の方法が考えられます。 これらの方法を少しずつ試してみれば、どの方法を使えば解きやすそうかが分かります。 解きやすそうな方法が見つかれば、その方法を使ってさらに解き進めればいいというわけです。

3.3 必要条件と十分条件

 必要条件・十分条件という用語を聞いたことがあるでしょうか? 高校数学では比較的早い段階で習う分野ですが、よく理解できていない人が多い気がします。 ですが、必要条件・十分条件という考え方はこの分野の問題に対してだけではなく、あらゆる数学の問題を解く上で大変重要なものなのでしっかり理解してほしいです。

 そのため、この節では必要条件・十分条件について解説します。

 定義は以下のようなものです。

{ \displaystyle p \Rightarrow q \,(\,\, pならばq\, ) であるとき、 }

{ \displaystyle p\,は\,q\,であるための十分条件 }

{ \displaystyle q\,は\,p\,であるための必要条件 }

 もし、{p}{q} だとよくわからないという場合には、 {p}{x=1} , {q }{x^2=1} を当てはめて考えてみてください。

{ \displaystyle x = 1 \Rightarrow x^2=1 \,であるので、\\ x = 1 \,は \,x^2 = 1 \,であるための十分条件\\ x^2 = 1\, は \,x = 1 \,であるための必要条件となります。 }

 ですが、これをただ暗記するだけでは理解したことにはなりませんし、よく間違えてしまいます。


 必要条件・十分条件という名前がつくのにはちゃんと理由があります。

 まず、「{p}{q} であるための十分条件」について見ていきます。

 {p}{q} であるための〜条件というのは、言い換えれば、 {q} が成り立つためには、{p} という条件はどういう役割なのかということを表しています。

{ \displaystyle p \Rightarrow q } というのは {p} が成り立つとき {q} は成り立つ、という意味です。 このときに、 {q} が成り立つにはどういう条件が必要かな、と考えると {p} という条件が成り立っていればそれで十分(それさえあれば {q} が成り立つ)と言えます。

 そのため、

{ \displaystyle p\,は\,q\,であるための十分条件 }

と呼ぶのです。


つぎに、 「{q}{p} であるための必要条件」について見ていきます。

{ \displaystyle p \Rightarrow q }

は対偶を取ると

{ \displaystyle \overline{q} \Rightarrow \overline{p} \,\,\,(\,q\, でないなら\,p\, でない) }

となります。

 このとき{p} が成り立つにはどういう条件が必要かな、と考えると、 「{q} でないなら {p} でない」なので少なくとも {q} が成り立っている必要があります。 ただし「{q} が成り立つと必ず {p} が成り立つか」と言われるとそうではありません。

 つまり、{p} が成り立つには {q} という条件が成り立つことが必要であるため、

{ \displaystyle q\,は\,p\,であるための必要条件 }

となります。


 以上の説明がよくわからなかった場合には、{p }{x=1} , {q }{x^2=1} といった、具体的な式を当てはめて考えてみてください。

3.4 必要×十分

{ \displaystyle p \Rightarrow q \\ p \Leftarrow q }

が両方とも成り立つ時、

{ \displaystyle p \iff q }

と表し、{p}{q} は同値である、または {p}{q} であるための必要十分条件であると呼びます。

 この同値という考え方は問題を解く上でとても重要です。なぜかというと、数学の答えというのは問題と同値なものだからです。


 具体的な例を見ていきます。 簡単な例ですが、次のような問題文を考えます。

{ \displaystyle x(x-1) = x ~~を満たすxを求めよ }

誤った答え1

{ \displaystyle \begin{aligned} x(x-1) &= x \\ x-1 &= 1 \\ x &= 2 \end{aligned} }

 2行目の {x-1=1} というのは1行目に対する十分条件ですが必要条件ではありません。

{ \displaystyle x(x-1) = x ~~ \Leftarrow ~~ x-1 = 1 } は正しいが、

{ \displaystyle x(x-1) = x ~~ \Rightarrow ~~ x-1 = 1 } は誤りだからです。

 このように、問題に対して十分条件必要十分条件ではない)を考えてしまうと、求まった答えは確かに問題の条件を満たすけれども他の答えを見落としている、ということになります。


誤った答え2

{ \displaystyle x(x-1) = x }

{x \lt 0 }の場合、左辺は正、右辺は負となる。

したがって、答えは

{ \displaystyle x \ge 0 }

 この場合は、{ x\ge 0} というのは1行目に対する必要条件ですが十分条件ではありません。

 このように、問題に対して必要条件だけを考えてしまうと、求まった答えには正しい答えが含まれているけれども絞りきれていない(答えでないものも含まれている)ということになります。


正しい解

{ \displaystyle x(x-1) = x \\ x(x-2) = 0 \\ x = 0,~2 }

 この場合、2行目、3行目ともに上の行と同値な数式です。 そのため、問題と同値な答えを得ることができています。


 今回は簡単な例だったので、正しい解のように解けることが当たり前の様に感じるかもしれません。 ですが、問題が少し難しくなると、気づかぬうちに必要条件のみ、または十分条件のみを考えてしまっていることがあります。

 必要条件のみを考えてしまうのは、問題の条件を見落としていたり、使いきれてない場合が多いかと思います。 問題の条件を全て使えていない場合、その答えは問題に対する必要条件となってしまっているのです。

 一方、十分条件のみを考えてしまうのは、式変形でミスをしているパターンが多いかと思います。 よくあるミスが方程式の両辺を0または0になりうる式で割ってしまうというものです。 誤った答え1の間違いもこのパターンとなります。

 問題を解く際には、必要条件・十分条件を意識して、問題と同値なものを求められているかに注意してください。

前: 2章 問題を理解する
次: 4章 解答を書く
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